全く問題ない。雨中の中でフヤケタ足も、少し安めば元通り。外に出てシェルターを張った場所を確認する。
シェルターを畳み脇の川原へ移動する。湯を沸かしインスタントラーメンをこしらえる。
5分もたたないうちにテントが見えた。同類がいるではないか。「あれっ」 近づいていくと何張りも。そこはババ平のキャンプ場。
やってしまった。あとわずか数分歩けばキャンプ場だった。昨夜はキャンプ場のことは全く頭になく、下りながら一張りのスペースをただただ探していた。シェルターに入ってしまえば、キャンプ場も道も同じ。たいして変わりはしない。
槍沢ロッジを抜ける頃あたりから、登ってくるグループが増え始めた。早い時間に会うパーティは登山者しかりとしているが、下るほどに軽装でピクニック的な装備のご一行が増える。
横尾山荘のトイレの前の手洗い場。水を止めずに流しているカラン。3日ぶりに頭に水をかけ、素で洗う。気持ちいい。先を急ごう。
登山者が見えなくなると走りをいれ、先に見えると歩きにかえる。それをずーっと繰り返す。前方から二人の若いトレイルランナー。かなり速いペースで走り去っていく。徳沢を越える。それにしても長いな。横尾から河童橋までは、登山者の少ない時間帯に走りで通過したいものだ。 8:15 上高地河童橋着。
今日は土曜日。多くの観光客が、美しい山容を誇る穂高岳を青く澄み切ったこの梓川に吊られる河童橋に立ち望む。
北アルプスを越えてきた。これまでの道程を振り返りながら、肉まんなどを食す。
いろいろと失敗した。道も何度か間違えた。濃霧の中雪渓に道が覆われていたときは前進は無理だとも思った。ただ、それらの苦難は間違いなく本戦でも起こりうることだ。それらを前に前進を止めていては、感覚を研ぎ澄ますことはできないだろう。
無謀?いやそれは違う。起こりうるあらゆる結果を想定しながら、確実に歩を進めた行為だ。間違いは素直に認め戻る。先の見えない道程を、可能性のない選択肢をつぶしながら、選択された道がより正しいであろうことを確認しながら進めた。
山歩きを始めたばかりの初心者だ。これで十分な経験が積めたなどとは思わない。しかし、濃密であり一瞬一瞬が今後につながる経験の連続だったことは確実に言える。そんな自信がついた北アルプス越えだった。
その9へつづく・・・

