2009年10月02日

TJAR試走 北アルプス編「はじめの一歩 その9 最終章」(ビバークトレーニング 横内忠之さん)

900 バスターミナルを出る。
松本駅を目指す。昨日の長い行動、短い睡眠時間。通常なら走る気は起こらない。不思議なものでまだ3分の1と思うと、始まったばかりのような感覚。体もいたって元気。足も問題ない。気になるのは、雨で濡れたシューズ。この中の若干ふやけた足に致命的なダメージが起こらないことを願う。

日本海から馬場島まではほとんど歩いた。重たいザックを背負うことに慣れていないことが主因だ。このロード区間は、そのザックを背負った状態で走る感覚を磨くことを目的としている。歩きをところどころ入れながらできるだけ走る。雨が再度降り始めた。レインウェアを羽織る。鎌トンネルの前にきた。ハンドライトを取り出そう。 ”どうしたことか” 入れてあるはずの場所にない。

しばし行動を振り返る。そういえばシェルターの天井にくくりつけて灯りをとっていたが、それを片付けた記憶がない。ザックの奥からシェルターを取り出し、袋の外から握ってみると、確かに細長い硬いものがある。この中だ。バスやタクシーが通る横でシェルターを拡げ、ライトを取り出す。
 鎌トンネルを過ぎいくつかトンネルを越えたころ、突如左足小指に痛みが出た。こんなところを痛めたことはなかったな。靴を脱ぐと原因がすぐにわかった。靴下。濡れている靴下が縒れており、フヤケタ小指の皮膚ががその縒れにそっている。そんな状態で走り荷重をかけてきたものだから、そこが裂傷している。キズパワーパッドを処置する。とりあえず他は大丈夫そうだが、フヤケタ状態でどこまで持つか不安だ。念のためCompeedで両足の親指小指をガードする。

走り始める。少し痛みはあるが、どうってことない。十分に走れる。気がつけば背中のザックがあまり気にならなくなっている。馬場島まではあれほど重いと感じていたのに。確かに水の量は少ない。食料も大分減った。だがまだしっかりと重さはあるはずだ。慣れてきたようだ。
 トンネルの中の段差ある歩道(?)は、上高地から離れるほどに狭くなっている。場所によっては、歩くことさえ困難なつくりだ。車がきていない間に車道をハイスピードで進み、車が来ると退避。そんなことを繰り返しトンネルを通過する。さわんどでコーラ休憩(1100)。 奈川渡ダム(1225)。喫茶店。
汚い格好のうえに雨の中を走ってきてぐしゃぐしゃ。店に入るのは若干ためらわれたが、嫌な顔せず迎えてくれたので、そのまま入る。レーズンパンとラーメンセットを注文。しばし休憩の後、再開。

TJARのルートは一旦ここまで。ここからは松本方面に下る。しばらくすると道の駅。そのまま通過でもよかったが、コーラ休憩にする。ここには天然水が出る蛇口がある。ハイドラパックの水を入れ替えようかと思いそれに手をかけたが、面倒になってやめた。一口口に含みその場を後にする。
 上りは歩こう。走り続けるほどに上りが恋しくなる。上りを無意識に歩いているといつの間にか平らになっている。いかんいかん走るんだ。

波田町に入る。”河岸段丘に味なまち” の標語。いったい誰が考え、誰がそれを採用したのか。意味はわかるが、誰に向けた言葉だ。河岸段丘など地質学者以外にどれほど興味があるだろう。味なまち?いたるところ味なまちだ。あっちを立てればこっちが立たないのはわかるが、波田町=スイカ。それを前面に出すべきだ。スイカ目当ての客がくれば、その他の ”味なもの”にも自然と目がいく。わかりやすい一点集中で集客すべきだ。走りながら、そんなつまらないことを考えている。
 そういえば、この先の7-11の併設でうまそうな鯛焼き屋があった。数ヶ月前に立ち寄ったときは、10分ほど待たなければいけないというので、味わうことなく通り過ぎてしまった。そこで小休止しよう。

鯛焼き屋。メニューに 夏限定 ”冷やし鯛焼き” の文字。それを注文する。鉄板の上からではなく冷蔵庫から透明のラップにくるまれた鯛焼きが出てきた。ほおばる。うまうま。もっちり皮の中は餡とクリームの絶妙なハーモニー。どこかで聞いたことがあるようなセリフそのまま。本当においしい。

7-11でアクエリアスを購入し、身支度を整え再出発。疲労がでてきたようでスピードがあがらない。坂道もほとんどなくなり、歩きを入れるポイントがなくなる。思わず、 「3つ目の信号まで行き小休止」 などと、休憩ポイントを都合のよいように設定する。
 松本インターまで何kmの看板が出てきた。松本駅はそのすぐ先だ。まずは、インターを目指そう。そう思うとなぜかこみ上げるものがある。昨年初めて出場したウルトラマラソン野辺山100km。後半、腸脛靭帯を痛めて歩き通した。

残り3kmの看板を見たとたんに、顔がくしゃくしゃになった。こらえようとしても、断続的に自然と湧き上がる気持ちに揺さぶられる ”くしゃくしゃの顔” を平静を保つように制することはできず、ゴールを越えた。似たような感覚だ。ただ、これは序章だ。始まりに過ぎない。そう思うと気持ちが引き締まる。
 松本インターを越える。後少しだ。足取りはとたんに軽やかになり自然とペースが上がる。浴衣やお揃いの法被をきた人たちが増え始めた。今日は松本ぼんぼん。一人異様な出で立ちでその中を駆ける。 1650 松本駅着。
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この旅の最終目的地。2日と20時間の旅が今終わった。
 「顔が濡れているのは雨のせいかい?」「いや、泣いているんだよ」「どうして?」「 ”はじめの一歩” が、とっても充実して、とてもとても ”大きな一歩” だったから」

おわり
posted by TJAR at 23:34| Comment(1) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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