2009年09月20日

TJAR試走 北アルプス編「はじめの一歩 その8」(ビバークトレーニング 横内忠之さん)

8/1AM4:00頃。槍ヶ岳を目指す一行の足音が耳元に響く。少しの間、シュラフカバーでゆっくりするが、これからどんどん上がってくるに違いない。420起床。足の状態を確認する。

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全く問題ない。雨中の中でフヤケタ足も、少し安めば元通り。外に出てシェルターを張った場所を確認する。

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シェルターを畳み脇の川原へ移動する。湯を沸かしインスタントラーメンをこしらえる。


517河童橋に向け腰をあげる。
5分もたたないうちにテントが見えた。同類がいるではないか。
「あれっ」 近づいていくと何張りも。そこはババ平のキャンプ場。
やってしまった。あとわずか数分歩けばキャンプ場だった。昨夜はキャンプ場のことは全く頭になく、下りながら一張りのスペースをただただ探していた。シェルターに入ってしまえば、キャンプ場も道も同じ。たいして変わりはしない。
槍沢ロッジを抜ける頃あたりから、登ってくるグループが増え始めた。早い時間に会うパーティは登山者しかりとしているが、下るほどに軽装でピクニック的な装備のご一行が増える。
横尾山荘のトイレの前の手洗い場。水を止めずに流しているカラン。3日ぶりに頭に水をかけ、素で洗う。気持ちいい。先を急ごう。
登山者が見えなくなると走りをいれ、先に見えると歩きにかえる。それをずーっと繰り返す。前方から二人の若いトレイルランナー。かなり速いペースで走り去っていく。徳沢を越える。それにしても長いな。横尾から河童橋までは、登山者の少ない時間帯に走りで通過したいものだ。
 815 上高地河童橋着。
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今日は土曜日。多くの観光客が、美しい山容を誇る穂高岳を青く澄み切ったこの梓川に吊られる河童橋に立ち望む。

北アルプスを越えてきた。これまでの道程を振り返りながら、肉まんなどを食す。
いろいろと失敗した。道も何度か間違えた。濃霧の中雪渓に道が覆われていたときは前進は無理だとも思った。ただ、それらの苦難は間違いなく本戦でも起こりうることだ。それらを前に前進を止めていては、感覚を研ぎ澄ますことはできないだろう。

無謀?いやそれは違う。起こりうるあらゆる結果を想定しながら、確実に歩を進めた行為だ。間違いは素直に認め戻る。先の見えない道程を、可能性のない選択肢をつぶしながら、選択された道がより正しいであろうことを確認しながら進めた。

山歩きを始めたばかりの初心者だ。これで十分な経験が積めたなどとは思わない。しかし、濃密であり一瞬一瞬が今後につながる経験の連続だったことは確実に言える。そんな自信がついた北アルプス越えだった。


その9へつづく・・・

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2009年09月14日

TJAR試走 北アルプス編「はじめの一歩 その7」(ビバークトレーニング 横内忠之さん)

1835双六小屋着。よらずに樅沢岳を目指す。
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高度を上げると雨に突風。辺りは暗くなり始めるし、気持ちを萎えさせる天候だ。レインウェアのフードをしっかりとすると暖かい。ほどなくして、樅沢岳。
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西鎌尾根に入る。
雨は良いとしても濃霧だ。TIKKA XPを腹に巻き、ワイドにして足元を照らす。手にはsuperFire SF-301を持ち、先々を照らす。

だが、霧で反射し辺りの様子がまったくつかめない。千丈乗越までは一本道のはずなので、道を外れさえしなければ、問題ないはずだ。どんどん先に進む。時折広いところに出て、道が途切れるが、慎重に辺りを歩き回り、分岐がないことを確認し、その先にある道を見つけ進む。

道の横には雪渓がある。また、良さそうなテン場がいくつもあることも確認できた。先ほどの男性の言っていた通りだ。どんどん進む。 

「あれっ」、道が雪渓に覆われている。濃霧で先は全然確認できない。 ”さて、どうする?” 天然のテン場に戻り夜明けを待つか?。いや、道が向かっているだろう先に雪渓の上を歩いていこう。 ”もしそれが長かったら?戻ってこれる?” 不安を抱えながら、まっすぐに歩く。そうすると、濃霧の中を照らすライトが一筋の濃淡の違う様子を浮かび上がらせていた。道か?。緊張が解けていく。良かった。さらに進む。

また雪渓に覆われているではないか。迷わずまっすぐに行く。おかしい。あきらかにおかしい。斜面の様子や雪渓わきの様子を見ても、この先に道があるようには思えない。どうする?。一旦雪渓の前まで戻る。霧で目の前にしか届かない光で、丹念にあたりを探る。そうすると、先ほどあるいてきた道から山側に90度折れる先の雪渓斜面に、かすかな踏み跡が見えた。これか?、踏み跡を外さないように歩を進めると、程なくして道を発見。 「ふう」 疲れた。
 
先に進む。それにしても西鎌尾根は長い。しかも何の標識もない。暗く霧がたちこめ、見つけられなかっただけかもしれないが。

先に進むとやっとやっと千丈乗越の標識。おや、いつのまにか雨が止んでいるし、霧もなくなっているではないか。空を見上げると星空。さらに東に目をやると槍ヶ岳周辺の峻険な山容が暗いなかでもしっかりとそのシルエットで存在感を誇示しているではないか。

やっとここまできた。先ほどまでの試練を乗り越えてきたからこそ、今こうやって姿を現した槍ヶ岳にただ一人迎えられている。
 
うれしさで、高度を上げる足も幾分軽い。だが、まだまだ長そうだ。

緊張が解けたせいか、お腹もすいてきた。急ぐ必要はない。十分にこの夜を堪能しよう。止まってSoyJoyを食べると、遠く北側の谷にある雲海に稲光。音は聞こえない。ここはそのはるか上の別世界。星空で雷とは無縁だ。
「おう、流れ星。」随分と大きかったな。そんな夜を堪能しながら、槍ヶ岳山荘を目指す。
 

22
40槍ヶ岳山荘着。
ここなら携帯がつながるかもしれない。家族に無事を伝えよう。
それにしても風が強い。ここのテン場に泊まることも考えたが、高度を下げて良い場所を見つけよう。あとは下るだけだと思うと、20時間近く動き続けているのにもかかわらず、まだまだ動かせそうな感覚だ。
 
テン場を横切り下る。

しばらく下ると標識。
「あれっ、おかしい」地図を確認するとルートを間違っている。ただ、分岐があった記憶がない。それでも間違っているのは確実なので、気を取り直して、下ってきた道を登る。小屋の真ん中にくると、その目の前に下る道があるではないか。しかもそこには ”上高地” の文字が。もう迷わないですみそうだ。
 

どんどん下る。岩につけられたマークを確認しながらくだる。
「あれっ」 テンポ良くあったマークが途切れた。先に進むがマークがない。どういうことだ。一旦マークのある場所まで戻ろう。最後のマークまで戻り、辺りの岩場に次のマークを探すが見つからない。ふと雪渓に目をやると、しっかりとした踏み跡があるではないか。 「そうか対岸に続いているんだ」 雪渓を渡った先に道を発見。こういうこともあるのか。

しかし、あのまま沢を下っていったら、どこにいっていたのだろう。今回の旅では、来た道を何度となく戻った。その全てが戻って正解。そこにはしっかりと次への道が隠されていた。厳に勝手な思い込みはせず、慎重に事を運ぶことの大切さを痛感した。
 


どんどん下る。時計の針は1:00をまわった。そろそろ寝床を探すか。下りながら辺りを見渡すが、良い場所は見つからない。細い道は岩・石だらけだが、ちょうど一張り張れそうな場所があった。この狭い道に張ろう。

130就寝。

その8へつづく・・・

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2009年09月01日

TJAR試走 北アルプス編「はじめの一歩 その6」(ビバークトレーニング 横内忠之さん)

948薬師岳着。
朝仕込んでおいたアルファ米の残りを食す。行く先に薬師岳山荘が見える。
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20分休憩後、下り始めるとあっという間に山荘。よらずにつっきる。さらに下ると、疲れきり座り込んだ老夫婦が東の空を指差しながら
「山はあれでしょうか?」「薬師岳ですか?」「ええ」「いえいえあちらですよ」「あっそうですか。それではがんばって行くかね、ばあさん」彼らの指差した東側に見えるピーク。地図には ”昭和38年冬 愛知大学大量遭難地点” の赤文字が記されている。

薬師峠に入ると、そこは沢。
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沢を下るが、ところどころ、”増水していたらどうやって下るんだろう” という地点がある。天候によっては足を止められる要注意ポイントだ。薬師峠キャンプ場を横切り、太郎平小屋に向かう。
 1121太郎平小屋着。
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広い敷地のベンチには、何組ものパーティが昼食をとっている。カレーを注文しよう。高校生とおぼしきかわいらしい女の子が、「大盛りにしますか?」 大してお腹がすいていたわけでもないのに、つい 「それじゃあ、大盛りをください(1000)」 飲み物カウンターでダカラ(400)を頼む。カレーを待つ間、シェルターを拡げる。大盛りカレーに500ml飲料。しこたま重たくなった胃袋を抱えて11:47黒部五郎岳に向けて出発する。

曇り、なんとなく空模様があやしくなってきた。突然大粒の雨。仕舞い込んでいたレインウェアを取り出し着込む。その先雨は止んだり降ったりを繰り返す。

 黒部五郎岳の肩の分岐。
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霧が次第に濃くなってきた。北側カールルートをとる。後から気づいたことだが、 ”濃霧時は稜線ルートが良い” と地図に記載あり。その濃霧の中を川原と言っても良いカールを進む。だだっ広いカールだが、道を外れないように濃霧中でも視認できるマークがテンポ良く現れ、不安はない。
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雨足がどんどん強まる。黒部五郎小屋に向かうパーティをいくつか追い越す。もうすぐ小屋だろうと思われる場所に、足並みが揃わないご一行様が足の遅い方を待っているようだ。疲れ切り雨で冷え切ったせいか、引きつった表情の男性が、
「小屋はまだでしょうか?」「もうすぐだと思いますよ」このルートは地図からイメージするよりも長い感じだ。なかなか小屋が現れないことに、苛立ち始めるのも、パーティの状況から頷ける感じだ。

1540 雨の中、黒部五郎小屋着。
若い小屋の主人が、
「お泊りですか?」「いえ」「テントですか?」「いえ」「まだ、この先進みます。」主人の顔色が変わる。「もしかしてレースですか?」「いえ、単独で歩いているだけです。」ますます怪訝な顔つきとなる。忙しい時間帯だが 「何か暖かいものを頼めますか?」 ラーメンならできるというので、コーラと合わせて注文する。横でやり取りを聞いていた一日限りの手伝いをしているという男性が、「ザック小さいね?」一通りの荷物が入っていることにしきりと関心する。「俺なんか70Lがぱんぱんで、20kg以下にしたいと思うが、無理だな。」経験豊かと思われるこの男性にいろいろと聞いてみる。槍ヶ岳まで難所はないこと、西鎌尾根には天然ビバークポイントはいくつもあること、心強かったのは「大丈夫、この時期凍死することはないよ、その装備があるなら心配ない。寒かったら歩いていれば良いしね。水だって雪渓から作れるし、この雨だからコッヘルをおいておけば、すぐたまる。」ラーメンをいただき先を急ごうとすると、主人が「どこまで行くのですか?」「槍ヶ岳までは行きたいと思っています。」雨足が強くなる外を見ながら、「これからさらに下り坂という連絡が入っています。雷だって落ちるかもしれない。小屋はそんなときに泊める義務があるんです。行くなら、それは自己責任。ただし、何かあったらすぐに戻ってきてください。」ありがたい言葉をいただき、1610小屋を出る。 斜度のある斜面を三俣蓮華岳方面を登る。下ってくるパーティが「双六までかい?」「いえ、槍ヶ岳」「ふぇー、上には上がいるもんだ。」上も下もないと思うが、山での常識とは離れた行動をしていることは自覚しておこう。先に進むと三俣蓮華分岐。
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写真の通り、標識が2つある。なぜか黄色の古ぼけた三俣蓮華岳を指す方向に向かう。踏み跡はあるが、少し進むとあきらかにおかしいことに気づく。引き返し、新しい標識を見る。それは先ほどとは少し方向の違う谷を指している。どうやらこちらが正しいようだ。

その7につづく・・・
posted by TJAR at 07:30| Comment(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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