2008年08月23日

【西岡利泰選手】トランスアルプス感想

 レースに参加しての感想

 8月17日17時25分、無事静岡大浜海岸にゴールすることができました。応援して下さった皆様、どうも有り難うございました。

 元々このレースに参加することを決めたのは、360°の大展望の中で走ってみたら気持ちよいだろうな、というものでした。但し、日本海から太平洋まで自分の足で継ぐ自信はさほどなく、行けるところまで行こう、と思いスタートしました。

 初日午前0時スタート。北海道からの移動もあり、不本意ながら徹夜状態でのスタートとなってしまいました。劔岳への登りで睡魔に襲われ、5分睡眠を繰り返しながら頂上へ抜けました。劔岳周辺は稜線が切り立っており、なかなか勇ましい景観でしたが、あふれかえる人にはややげんなりでした。頂上付近では鎖やら梯子やらが存分に使われており、自分がその恩恵で通過できているにもかかわらず、山を自然な形で残して欲しい思いから、残念な気持ちにもなりました。
 その先立山から上高地は、選考会で走ったルートなので、安心して走れました。眠気が強くまだ先が長いことから、この日はまだ明るいうちに五色ヶ原にてビバークすることとしました。夕日に照らされた五色ヶ原は、印象的な風景でした。1晩くらいはこのような晩があっても良いでしょう。

 2日目は上高地まで。前日一人だけ手前でビバークしたため、ほぼ一人旅でした。選考会の時よりも時間がかかり、やや焦りを感じましたが、その日のうちに上高地まで下ることができました。個人的には、黒部五郎岳のカールがお気に入りの風景です。まぶしい緑の中に小川が流れ、心が安まります。

 3日目は中央アルプスへの入り口、木曽駒高原スキー場までの移動です。舗装路の70km強なので、足へのダメージを心配していたのですが、抑えて走ったおかげもありさほどダメージは残りませんでした。但し、単調さには耐えられず、観光気分で道脇の店へはよく立ち寄りました。無添加パンや現地牧場の手作りジェラード・ソフトクリーム、名産のそば、木曽和牛…。いろいろ頂きました。気分的にはリフレッシュできました。

 4日目は中央アルプスを越えて市野瀬まで。中央アルプスは木曽駒が岳周辺は(登山客ではなく)観光客の海で、精神的に疲れました。切り立った宝剣岳の鎖場までジーパン・スニーカーで行く人がいたのは驚きでしたが、他の方から見ていると、こんなところでレースをやっている我々も同様なのかもしれません。宝剣岳を過ぎると、一転して静かな山旅になりました。この頃から前日発症した股ずれの痛みが悪化し、速度を更に抑えなければならなくなりました。ここでセーブした分最後まで体力が持つのではないかな…、と自分をだましながらゆっくり進みました。
 18時20分、中央アルプス下山。またもや観光気分で駒ヶ根の町に入りました。下山口のスキー場を出たところでまずソースカツ丼の看板を見つけたので、やや高級そうな店構えに負けず店に入りました。たいそう美味しかったです。店の外に足湯がありましたが、一度浸かるともう歩けなくなりそうなのでやめました。
 例に漏れずすき屋にも寄り、コンビニで買いだしをし、市野瀬へ向かいました。市野瀬へは、知り合いが応援に駆けつけてきてくれました。ブログへのメッセージや携帯へのメールもそうですが、応援は大変力になります。

 5日目から南アルプスです。前日の市野瀬到着が遅かったため、明るくなってから最後尾で出発しました。股ずれ対策で、ここからはタイツは脱いでしまいました。
 南アルプスは、北と打って変わって人気のない静かな山でした。天気がいまいちとあって、初日に会った一般登山者は10人にもなりませんでした。少しがんばって熊の平でビバーク。数日前からできている靴擦れが辛いですが、少し走ると痛みが麻痺するので、それでごまかしながら進みました。

 6日目は、天気が崩れると聞いていたのですが、予想を裏切り見事な晴天。ここぞとばかりにぐんぐん進みました。塩見、荒川、赤石と3000m級の山を三つ超えて、百間洞でビバークです。途中、一般登山者との会話も楽しみつつ、一緒に記念撮影をしつつでした。荒川を下る辺りで夕焼けとなりましたが、紅く染まってゆく山並みはなかなか見応えがあります。私の好きな時間の一つです。但し、その後のラテルネ行動はあまり好きではないのですが。

 7日目、南アルプス下山の日です。地図上はあまり距離がないようにみえましたが、疲れもあってたっぷり時間がかかってしまいました。最後の下山前の茶臼小屋では、食事を200円で出して下さり、大変うれしかったです。明るいうちに下山しましたが、そこからが非常に辛いロードの始まりです。皆に習い徹夜で静岡を目指しましたが、激しい眠気に襲われ、フラフラになりました。足の筋肉も限界を超えているようで、一度休憩すると棒のように堅くなります。「ここまで来れば歩き続ければゴールできるよ」と応援の方々には言われましたが、自身では半信半疑でした。途中湯川さんと一緒になり、湯川さんのペースでひっぱって頂いて、やっとゴールできる自信を持てました。8日目17時25分、静岡大浜海岸にゴールです。

 ゴールした時、大海原を目の前にしても、日本海から太平洋まで遙々やってきた実感はありませんでした。ただただ、信じられませんでした。靴に浸みてきた海水が靴擦れのキズに染み込み、非常に痛かったです。
 完走した実感は、日が経つ毎にじわりじわりと湧いてきました。

 日本アルプスは、日本の屋根だけあって雄大でした。カールが綺麗な北、短いながらも切り立っている中央、奥深さのある南とそれぞれ特徴があり、飽きがくることなく山を堪能できました。最後のロードはただひたすら辛かったですが、完走という目標のために、なんとかがんばり抜くことができました。

 私のような人間が完走できたのは、以下の点がポイントだったな、と感じます。@天気に恵まれ、連日晴天であった。A最初から完走を目標にして余裕を持ちながら進むことを心掛けた。B山中を楽しみながら進んだ。C常に前後に選手がおり、励まし合いながら進むことができた。(D熱心に応援して頂き、つまらない理由での棄権ができなくなった。)

 私の足は未だに痛みを発していますが、思い出は良い部分しか残らないようで、大変楽しかった8日間でした。一生の思い出になりました。スタッフの皆様、応援して下さった皆様、道を譲って下さった・応援して下さった登山者の皆様、どうも有り難うございました。

西岡利泰
posted by TJAR at 09:59| Comment(0) | 西岡利泰 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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